かつて多くの観光客で賑わっていたサイパン。しかし、近年はその様子が一変し、観光地としての活気が大きく失われています。
観光客数は大幅に減少
2019年、サイパンは年間約42万人の観光客を迎え、特に韓国、中国、日本からの旅行者が市場を支えていました。
しかし、新型コロナウイルスのパンデミックが直撃した2020年以降、観光客数は激減。2020年にはわずか約1.8万人まで落ち込み、観光産業に大きな打撃を与えました。
2023年には約19.5万人まで回復したものの、パンデミック前の水準には遠く及ばず、2024年後半から2025年にかけても減少傾向が続いています。
- 2024年7月: 約2.1万人(2019年比で53%減)
- 2025年3月: 約1.4万人(前年同月比で27%減)
韓国からの訪問者も減少が目立ち、2025年3月には前年同月比で約38%減となる約8,900人にとどまりました。
活気を失った街並みと背景にある要因

ガラパン地区では、観光客の減少に伴い店舗の閉店が相次ぎ、閑散とした雰囲気が漂うようになりました。レストランやお土産店の中には、かつて多くの旅行者で賑わっていた面影を残したまま、営業を終了している場所も少なくありません。
このような状況の背景には、いくつかの複合的な要因があります。
- 航空便の減少: アシアナ航空の運休や済州航空の減便などにより、韓国からのアクセスが不便に。
- 中国本土からの直行便停止: 米中関係の悪化により、中国人観光客の回復が見込めない状況。
- 日本からの渡航者減少: 円安や旅行需要の低迷が続いており、日本市場も伸び悩んでいます。
観光客が減少し、観光関連のお店やサービスの終了が目立ち、賑わっていないのでお客さんが観光客が集まらないという悪循環。
厳しい現状の中で模索される再生の道
厳しい状況が続く一方で、サイパンでは観光業の再建に向けた取り組みも始まっています。
・新たなターゲット市場の開拓
台湾やオーストラリアなど、これまで注力してこなかった市場に目を向け、誘致活動を強化。
・イベント誘致による集客
マラソン大会や釣りイベントなど、テーマ型旅行需要の掘り起こし。
・観光インフラの再整備
滞在環境や観光施設のリニューアルを進め、再訪したくなる観光地づくりを目指しています。
サイパンは現在、観光地としての転換点を迎えています。かつての賑わいを取り戻すには、戦略的な市場開拓と、旅行者が「また訪れたい」と思える環境づくりが鍵となるでしょう。
再び活気あふれる南国リゾートとしての輝きを取り戻せるか、今後の動向が注目されています。
ホテルの外に出たくなる島へ 〜サイパン観光の未来を願って〜
コロナ禍を経て、サイパンに再び足を運ぶ人も少しずつ戻り始めています。
しかし、かつて観光客で賑わっていたガラパンの街を歩いてみると、閉店した店舗のシャッターが並び、あの頃の活気が遠のいてしまったことを痛感せざるを得ません。
海外旅行とは、ホテルの中で完結するものではありません。むしろ、旅行者の心に残る体験の多くは、街を歩き、人とふれ合い、ローカルな店で食事をしたり、お土産を選んだりする時間の中にあります。
けれど今のサイパンでは「ホテルから出ても何もない」と感じてしまう状況が少なくありません。
綺麗な海はあるが
もちろん、サイパンには素晴らしい自然があります。マニャガハ島の海、バンザイクリフからの景色。ですが、それだけでは旅行先としての魅力を維持し続けることは難しいでしょう。
旅行者は、ただ「美しい場所」を求めているのではなく、「そこでしかできない体験」「温かい交流」「発見のある時間」を求めているのです。
私は、サイパンの街が再び観光客を温かく迎える場所になってほしいと心から願っています。
まずはインフラ整備
インフラ整備はその第一歩です。老朽化した施設の整備や、新しいショップやカフェの誘致、観光案内所の充実など、小さな変化の積み重ねが、街全体の魅力を大きく底上げしていくはずです。
観光は「島の経済の柱」と言われて久しいですが、その言葉を本当に現実のものとするには、空港を降りたその瞬間から、旅の終わりまで、滞在者が「また来たい」と思える体験を提供できることが不可欠です。
ホテルの外に出て、街を歩くことが楽しくなるようなサイパンに——。その未来を、旅人の一人として、心から応援しています。